Aousagi

安部公房『他人の顔』

100819_1.jpg

先日読み終えた安部公房さんの『他人の顔』。ちょっと前に読んだ『密会 』は好きな感じの小説じゃなかったので、どうかな?って思ったんだけど、この小説は好きでした。
もしも顔が無くなってしまったら…。
いったい何を基準に私が私である事を証明すればいいのか。

もし別人の顔のマスクをかぶったら…完全に別の人間になれるのではないか?

主人公の男は顔を無くしてしまった後、他人や奥さんとどう接して良いのか分からなくなって、自分とはいったい何者なのか、顔とはいったいどんな意味を持っているのかと迷走します。

そして、悩んだ末に別人の仮面をかぶる事で他人との(主に奥さんとの)関係を修復させようとやっきになるのですが、そのいきついた解決方法がすごい。でもその方法を実行する事で、今度は主人公の男と、仮面をかぶった主人公と奥さんと…三角関係になってしまうなんて!1人の人間が仮面をかぶることで2人の人間になってしまうという発想がまた素敵。

でも仮面ってそういう力は何かあると思う。

仮面をかぶった時の自分は自分じゃなくなるというか…本当の自分みたいなものが仮面の力をかりて出てくるというか。

ちょっと方向は違うけど、服もその1つだと思う。

“今日もこれ着て頑張ろう”って思える服や、この服を着るとちょっと強くなれた気がする…とか服って気持ちにも作用すると思うんですよね。

この小説の最後のほうに掲載されている《妻の手紙》が、私にとってはちょっとホラー。
何もかも分かっていて、あえて何も言わない…とか。
実は、主人公と奥さんって、とっても良い夫婦じゃないかって思った直後に恐怖の海に放り出されました。
ほんと怖い。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。